予防と健康管理ブロックレポート
1.はじめに
今回予防と健康ブロックの授業でアスベストが引き起こす疾患についてのビデオとストレスが体に引き起こす様々な影響と、最近増えてきている会社員のうつ病についてのビデオを見た。私は現代人にかかるストレスが私たちの生活にどのように影響しているのかに興味があり、また「病は気から」という言葉が示すように健康と精神状態には深い関わりがあり、病気になったときには体の健康の回復には色々な医療技術に頼るよりもむしろ精神的に患者が楽になるようにストレスを減らしていくことが大切なのではないかと考えた。
そこで以下のキーワード、論文を選びストレスが人間の生活にどのように関わっているのかを考察した。
2.選んだキーワード
私が選んだキーワードはストレスとライフスタイルだ。人の生活とストレスは深く関わっていると考え、ストレスによってライフスタイルがどう変わっていくのか、どのようにストレスを受け止めていくかということを調べるために次の二つの論文を選んだ。
3.選んだ論文の内容の概略
選んだ論文の一つ目は、「一人暮らしの要介護男性高齢者の在宅療養生活を支える精神的支えについて」という研究論文だ。以下に内容の概略を示す。
一人暮らしの高齢者が要介護状態になっても、在宅療養生活を続けていくためには、質・量ともに個人差はあるものの、保健・医療・福祉の分野で何らかのサポートが必要である。特に男性においては、その在宅療養生活を精神的に支えている要因について明確な仮説は立てにくい。そこで本研究では、一人暮らしの要介護男性高齢者3名(A氏・B氏・C氏)について、それぞれの在宅療養生活を維持している精神的な要因は何かを知る目的での3つの質問(1.在宅療養の決定要因2.実際の在宅療養生活の実感3.今後の見通し)を通してそれぞれの方にお話を聞いてまとめた。結果、この三名の要介護男性高齢者において、一人で在宅療養生活を維持している精神的な背景として以下の4点浮かび上がってきた。
1.今までの自分の人生への満足感を持つこと
2.自分の存在や役割を認識できること
3.自分なりの生活が送れる気楽さと、社会との交流を楽しみにした時間があること
4.一人でできるという自信とできなくなる不安の両立
在宅療養生活における不安は、精神的不安定の要因になりうる。一人暮らしの要介護男性高齢者においては、家事が自分でできなくなるということは同時に、在宅療養生活の維持が困難になることを意味する。だからこそ、一人暮らしができなくなるという不安は、在宅療養生活は自分で維持していくという自己管理意識や行動につながる。また、上記の考察を行う過程で以下の4点が精神的サポートとして有効であるということが分かった。
1.過去の快い体験を想起したり、今まで歩んできた人生を共有するかかわりをもつこと
2.社会との交流や社会活動への参加だけではなく、家族に代わる重要他者の存在を見つけること
3.一人暮らしでは体験できない日常生活のイベントを提供すること
4.対象者が自分で決めて生活している、自己決定して生きていることを尊重し、その人らしい一人暮らしの行き方を支える視点を看護師が持つことが重要である
選んだ論文の二つ目は「今の子どもたちが受けるストレス:子どもの「うつ」という視点から」というものだ。以下に内容の概略を示す。
ストレスとは、緊急事態に感情刺激によって交感神経の機能が亢進し、副交感神経の機能は抑制されるという一連の変化を生ずる現象である。ストレスは、野山で危険にさらされながら生活してきた人類の生存に大きな役割を果たしてきたといえるかもしれない。しかし、近代になって人類の生活様式は根本的に変化した。人類は原始人の体の仕組みを持ちながら、現代人として生きている。現代社会の様々な刺激(ジェットコースターに乗ったときや、試験のとき等など)に対して、人間の体は10万年前と変わらない生理的変化を起こす。それは多くの場合、現在の生活刺激に適合した変化ではない。このような刺激を受け続けると、人間はうつ病や不安障害とそっくりな状態を呈するのだ。現代の子供たちを取り巻く環境は刺激に満ち溢れており、自らに組み込まれている緊急事態反応が自然に作動してしまう機会が増えてきているに違いない。ここで注意しなければならないことは、子供たちが好きなテレビやゲームにおいても、それが過剰になると、知らぬ間にストレスになっている可能性がある。では具体的に子供たちを取り巻く現代社会環境はどのように変化しているのか。大きく分けると、以下の3つがかんがえられる。
1.社会・経済的環境の変化
2.家庭環境の変化
3.学校環境の変化
このような周囲の環境が変化することで子供たちにとってのストレスは昔と現代では変化していると考えてもよいだろう。また、子供たちが受けているストレスは、人生における比較的大きな出来事や生活の変化を伴う「ライフイベント」と、毎日の生活の中で起きる些細で、ありふれた「日常生活における出来事」に大別することができる。ただし、大きなライフイベントだからストレスが大きいかといえば必ずしもそうではなく、日常生活における些細な出来事だからといってストレスが軽いかといえばそうとも限らない。ストレスを受ける子供によって、子供のおかれている状況によって、時代によって、その子の性格や経験によって、ストレスの種類やその度合いが異なることが分かる。そのことは同時に、自分が苦手なストレスを知り、その対処法を考え、試行錯誤することで、対応可能な場合も少なくないということでもある。つまり、ストレスフルな刺激をいかにコントロールし、良質な刺激を選んでいくかということが重要なポイントになっていくだろう。また、わが国の一般の小・中学生における抑うつ状態について検討するため、
1. 子供のうつ病が増えている
2. 子供の不適応の表現型が「うつ」という形をとりやすくなっている
3. 現代の小・中学生は疲れている
4. 抑うつ症状を表す言葉が小・中学生にとってありふれたものになっている
5. 子供たちが自分の「うつ」を認識し始めた
では子供にとって「うつ」は何を意味するのか。現代の社会・文化の変化に対して、疲れ果て、順応のために時間がかかっているのかもしれない。では、そのような時代に生きる子供たちがみな不幸で悲惨であるかというと、決してそうでない。彼らは抑うつの時代に生きながら、新しい生き方を模索しているようにみえる。現代の子供たちの生き方は、決してわがままや自己中心的なのではなく、自分自身を大切にして、今を充実させる生き方へそのスタイルを変えてきているといえるかもしれない。
4.考察
2つの論文と授業で見たビデオからわかることは、ストレスは人間の精神状態に深く影響しているということだ。ビデオではストレスとは、体が防衛するための反応と紹介されていた。ストレスには二種類あり、1つは急性ストレスといわれるもので、もう1つは慢性ストレスといわれるものだ。前者は休養をとることで回復され、後者は緊張状態が持続することで生じる。過度のストレスはうつ病以外にも、高血圧、過敏症候群、不妊症なども引き起こすようだ。うつ病は悪化すると自殺にもつながる。最近では仕事や職場環境から来るストレスのせいか、30代の会社員の人のうつ病は多いようだ。そのような状況を考慮して、様々な企業が社内でのコミュニケーションをはかり、ストレスの原因を減らそうとしている。企業は、特に管理職がしっかり社員の精神状態を把握しつつ、産業医を中心とした体制を作るべきであると述べられていた。
以上のことより確かにストレスは人間が生きていくうえでいい影響を及ぼしているとは考えにくい。しかし、1つ目の論文で述べられていた、「一人暮らしができなくなるという不安は、在宅療養生活は自分で維持していくという自己管理意識や行動につながる」という一節や2つ目の論文の結論でも述べられているように、ある程度のストレスは人間が生活していくうえで必要なのではないか。その必要なストレスと必要でないストレスを見分けることこそ困難であろうが、生きていくためのモチベーションを維持するために有効に働くストレスもあるのではないか。ものごとの受け止め方は受け手によって様々であるため、ある出来事をストレスであると判断するのは難しい。日常の些細なことがストレスになっている場合は、大人や子供に関わらず多いだろう。また社会の変化が子供に与える影響が多いのだとしたら、うつ病の大人が増えてきている現代で子供のうつ病が増えてきているのは当たり前と考えることもできる。ここで周りの大人が子供のストレスを減らそうとするよりも、ストレスの種類を見極め必要のないものだけ取り除いていくことで子供たちも将来しっかりとした大人になっていける可能性も高くなるだろう。そういったことを的確に行うためにも、専門の機関を発足させて、医師が先頭に立って対策を練っていかなければならないだろう。企業だけではなく学校や団地を含むある一定のコミュニティーに専門機関を設置して、定期的に周辺住民の精神状態をチェックできるシステムを作るのもいいかもしれない。特に子供に関しては周囲の大人が見守っていくことが必要だ。
5.まとめ
ストレスは必ずしも人間の精神状態を悪くするものではない。様々なニュースで言われているストレスのイメージはその本質を的確に表しているわけではない。今回見たビデオの中で印象的だったのは、「ストレスは人生のスパイスである」という言葉だ。自分にとって悪いストレスをよいストレスに変えていくようなことも大切だ。それは人間一人一人が考えていかなければならないことだが、その様な研究の先頭に立つのは医師であるべきだ。このような視点を持って日々の出来事を観察してみると、また面白いかもしれない。